鶴岡市自然学習交流館周辺の自然環境についてご紹介します。
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標高274mの低山ながら、江戸幕府の直轄領として森林の伐採が禁じられたためブナ群生林が残っており、貴重な動植物が生息しています。ハイキングやバードウォッチングの場としても人気があります。
面積15ha、江戸時代に治山治水の水害対策と農業用水の貯水池として築造されました。現在もその役割を果たしつつ、生物の豊かな生態系を持ちながらの美しい景観は、訪れた人々を和ませてくれます。
面積24ha、上池と同様、江戸時代に水害対策と農業用水の貯水池として築造されました。周囲を散策できる遊歩道も整備され、また堤防には野鳥観察をできる「おうら愛鳥館」があり、1年を通して自然の移りかわりを見ることができます。池面に映る高館山も眺められます。
下池の東側に広がるこの場所は、もとは田んぼでした。下池から浸みでる水が、庄内の典型的かつ貴重な生態系を作っています。しかし、このままでは乾燥化が進み陸地化するため、ほとりあでは、市民とともに都沢湿地の外来種駆除や、水路の草刈を行い、多様な生物が賑わう地を守る保全活動を行っています。近年は市民の力で外来種駆除を行い、多様な生物が賑わう地を守る保全活動が行われています。
大山上池・下池は、ラムサール条約への登録に伴い、国の鳥獣保護区・特別保護地区に指定されています。高館山を含む一帯は、庄内海浜県立自然公園に指定されており、西面は北方に広がる庄内砂丘の一端に連なっています。高館山は、本州の平地では珍しく貴重なブナの群生地があり、寒地系植物と暖地系植物の双方が分布しているほか、多種の低標高地の湿性植物が見られるなどの特徴を有しています。
このように、当地域は人里に近いにも関わらず東北地方日本海側の低標高地の代表的植生を残しており、非常に多様性に富んだ優れた生態系を形成しています。
また、高館山や八森山に降った雨水や雪解け水が、落ち葉の腐葉土層に貯えられ、上池・下池に徐々に流れ込み、両池の水源ともなっています。さらに上池・下池の水は、昔から大山地域周辺の田畑を潤し続け、四季折々の自然の表情は人々を癒してきました。
上池と下池、それに高館山一帯は、大山地域住民の生活と密接な関係にあり、大山地域のシンボルとして多くの人々の憩いの場となっています。
両池には多種類の鳥類の生息が確認されていますが、冬には多くの水鳥が飛来し、全国的に重要な越冬地となっています。中でも下池はカモ類が多く、マガモは毎年2万羽から3万羽の飛来が確認されています。その他のカモ類では、コガモ、オナガガモ、ミコアイサなどが多く見られます。
そのほか、白鳥類はコハクチョウが越冬のため毎年千羽から3千羽飛来し、周辺の田んぼで食餌する風景が見られます。
ガン類ではオオヒシクイ、ヒシクイ、マガンが毎年確認され、まれにサカツラガン、ハクガンが観察されます。
春秋の渡りの時期には、数が減ってきているとされるアオジやカシラダカ、ベニマシコなどの小鳥も少なくなく、ヒクイナは山形県で唯一繁殖が確認されています。猛禽類では、冬期間にオオワシ、オジロワシ、ノスリなどが飛来しカモを捕食する姿が見られるほか、オオタカは高館山周辺に生息しており、一年を通して見られます。
上池・下池は県内でも一・二のトンボの生息地です。トンボの種類数は自然環境のバロメーターともいわれ、希少種のハラビロトンボやチョウトンボ、ウチワヤンマが生息し、最近ではオオトラフトンボやオオキトンボも確認されています。
チョウ類では、落葉広葉樹に繁殖する蛾類が多く発生するほか、暖地系のアオスジアゲハ、アオバセセリなども棲息しています。ギフチョウは個体数も多く、変異体も発見されています。
植物では、ブナ原生林が残されているほか、トチやイタヤカエデ、ケヤキ、オニグルミ、ハリギリ、アカシデ、ミズナラ、コナラ、ヤマボウシ、ハウチワカエデ、ホオ、クリ、アズキナシ、アオハダなど多様な樹木が生い茂ります。他にオオミスミソウ、シラネアオイ、キバナイカリソウ、マルバマンサクなどの日本海側の植物が圧倒的に多く分布しています。
7月に入ると、上池では湖面にハスの花が咲き始めます。最盛期の8月になると池一面覆われるようにハスの花が咲き誇ります。地域の住民が8月10日、11日の2日間だけ、ハスの花や葉の収穫を行い人々は仏前に供え、旧盆の行事として祖先の霊を祭ります。
参考文献:「平成20年度国指定大山上池・下池鳥獣保護区指定に係る調査報告書」尾浦の自然を守る会 平成20年7月発行